うだるような暑さの中


車椅子に座った息子を


押しながら歩く初老の父親


息子の視線は宙を切り


手足は自由に動かせないようだった


うだるような暑さの中




彼等の心情を


彼等の日常を


想像することができるか


そんなことを思いここに綴る自分に

嫌悪している



国道の向かい側の歩道には


買い物する主婦に

自転車に乗る学生


ありふれた日常



そのすぐそばに闇が潜んでいる


そのことに気付けない

目を向けたくない




やるせなくなるから


どうにもすることができないから


自分には関係ないと思っているから


自分とはまったく違う別の世界の出来事だと思っているから


自分が嫌いになるから




もし俺が


車椅子に乗っている側の人間なら



もし俺が


車椅子を押している側の人間なら




いったいどんな気持ちなんだろう


想像することができるか



もし明日


もし一年後


自分がそっち側の人間になっているかもしれない


自分の大事な人がそっち側の人間になっているかもしれない



そうなったらなったで

行きていくしかない




それなのに


目を向けたくない





切なくなるから


悲しくなるから


可哀想だと思っているから


そんな自分が嫌いだから






うだるような暑さの中


俺は車から見ていた


信号待ちの国道沿いで